第14回読売演劇大賞・優秀賞


草なぎ剛は手だれ」と書いた劇評を読んだことがある。
世間一般的には、SMAPの中では「不器用」と括られていそうだが「手だれな部分」はある。
そこを突いて美味く見せたのが『父帰る/屋上の狂人』であり『僕の歩く道』だったと思っていた。

わたくしが勝手に、喉から手が出る程欲しかった『朝日舞台芸術賞』の「寺山修司賞」は市川亀治郎さんに決まった。
選評には納得せざるを得ず、多いに落胆した。
願掛け半分の「東京競馬場行き」は効き目がなかった。
むしろ受賞するには「話が出来過ぎ」の要素が多過ぎた感はある。

年末年始の特番では笑い転げる程面白かった「ぷすまSP」等等はあったものの、正月気分が抜ける頃に、哲三さんは落馬するわ草なぎ剛は選外だわで、暗雲たなびく年明けとなった。

かにみえた。

今日付けの新聞紙上で『読売演劇大賞』の第1次選考結果が発表になった。

作品賞 「屋上の狂人」 シス・カンパニー4月公演
男優賞 「草なぎ剛」 シス・カンパニー4月公演 「父帰る」の黒田賢一郎役、同「屋上の狂人」の勝島義太郎役
演出家賞 「河原雅彦」 シス・カンパニー4月公演「父帰る」「屋上の狂人」

上半期の先行前残りで「優秀賞」受賞が決まった。
めでたい。うれしい。

作品賞は「屋上の狂人」が受賞。
一幕二場と捉えていたので意外だが、2作品を切り離して見た場合(本来2本立て公演)全体の完成度でこちらが選ばれたのだろうと思う。

わたくしの席からは「父帰る」の茶の間は見下ろす形となった。
父出奔の後、家族を守り束ね、奮闘して生きてきたこと。各人が抱える、息を潜めるような肩身の狭さ。
薄暗いながらも温かみが感じられる灯りが、積年の思いを十二分に表現していた。

一転して「屋上の狂人」。
200席の劇場空間を存分に使い、逆手に取ったかのような開放感たっぷりの美術が見せた。

今回の芝居に付いては「何故今?」「何故2本立て?」と不思議に思ったり、企画の勝利と思った時期もあった。

しかしながら演じたのは草なぎ剛である。
少しずつ少しずつ考えてきた。
「あのSMAPの」
「アイドルタレントにしては」
さりげなく意地の悪い書き方をされることもある。

2作品を通して、今時珍しいのではないかと思える程、外連味のない舞台だったが、草なぎ剛は持ち味を存分にいかして応えてみせた。
特に「屋上の狂人」においては、地方の素封家に生まれた義太郎に、持てる資質を重ね、品のいい仕上がりとなった。

意外と言っていいと思うが、草なぎ剛はきちんと評価されていて、受賞歴もめざましい。
しかし大方、ファンのみぞ知るところである。
今回は数年振りの「舞台」で『読売演劇大賞』の「男優賞部門・優秀賞」というとても大きい賞をいただいた。

劇場を出て、空を見上げたと言う人がいた。
劇場を出て、深呼吸して歩き出したと言う人がいた。
劇場を出て、草なぎ剛のファンで良かったと言う人がいた。

瀬戸内の空に、あふれんばかりにひろがった幸せを、みんなが分けてもらった。

今月下旬最終選考会。
2月上旬、大賞、各部門最優秀賞発表。
そうそうたる顔触れである。